“分かりやすい文章に必要な10のこと”
提供元:千葉大学アカデミック・リンク・センター学習支援スタッフ
2022年1月24日
- 文章を書く目的・狙いをはっきりさせる
- 結局のところ、何を言おうとしているのか?
- 初めに中心となる主張を固めてから書き始める
- その目的に応じて、話の展開・構成を考える
目的:文章の最終的な結論・落としどころ→自分が道筋から外れていないか確認する指標
- 目的を決めておかないと?
- 自分でも、道筋を見失ってしまう
- 読み手も、どこに連れていかれるのか分からず、理解しづらい
- 言葉を定義する
以下のような言葉を使うときは、それをどのような意味で使うのか定義しよう
- 意味や解釈が文脈や使う人によって異なる言葉
- 社会に定着していない言葉
- 専門的な言葉
- 一般的な使われ方とは異なる使い方をしている言葉
*自分では意味がはっきりしていると思っていても、読む人にとっては、そうでないかもしれない ⇒文献を読むことで、言葉の使われ方を知る
- 不正確な文を避ける
次のような文は、文章として不正解↓
- 主語がない文:〈例〉だが当時、富国強兵だった。
- 述語がない文:〈例〉江戸幕府は、フランスから軍事的に援助を受けていた。そして維新軍は、イギリスの。
- 主語と述語がねじれている文:〈例〉健康に必要なのは、長く眠るべきである。
- 対応する文末表現がない文:〈例〉あなたは英語を勉強した方がいい。なぜなら、海外で日本語は通じない。 →正解:なぜなら、海外で日本語は通じないからだ。
- 分かりにくい文を避ける
次のような文章は、内容を適切に伝えられない↓
- 修飾関係が曖昧な文
〈例〉美しい日本の私。
〈例〉太郎は勢いよく走る犬を追いかける花子に叫んだ。
- 修飾が長すぎる文
〈例〉これまで一般でよく言われている第二次世界大戦における海軍力から空軍力への転換、つまり制海権から制空権への力点の移行というものがもっている重要性は、……。
- 途中で話が変わっている文
〈例〉しかしベルリンへの戦略爆撃の影響力はそこまで大きくなかったのであり、国民はナチスの思想に染まりすぎていたので、第一次大戦の反省から、生活水準を下げないことがあまりにも効率的に機能していた。
⇒他の読み方ができてしまう可能性を考える&修飾部分は短めに(1文が2~3行に渡っていたら要注意)
- ふさわしくない文章表現を避ける
次のような文は、報告書やアカデミックな文章など、正確性が求められる文章にはふさわしくない↓
- 詩的表現を使った文
〈例〉鋭い判断が輝いた。
〈例〉ほのかに回復を見せるも、そのきざしが姿を現すには、その後長い長い時を要したのです。
〈例〉それは経済的な困難。(体言止め)
⇒凝った表現を使うのは、小説など限られた場面でだけ。誤解が生じないよう、明確な表現を心がける
- 主張をするときは論拠を挙げる
- 日常的な会話のなかで、自分の主張の説得力を上げるためにおこなっていることは?
⇒文脈を明確にしながら、根拠を挙げている
- 会話と文章の違いは?
- 文章での説得の場合、会話の場合と違って、話す表情やトーンによってニュアンスを伝えたり、相手の反応を見ながら説明を付け加えたりといったことができない
- 文章で相手に伝えるには
- 正確に言語化しないと、意図したとおりに相手に伝わらない
- 日常会話とアカデミックな文章では、必要とされる論拠が異なる場合もあるが、いずれにしても、十分な論拠を提示する必要がある
- 説得力をあげるには、データを論拠として挙げる
- データとは、文献に書かれていることや統計資料など
- 事実と主張を区別する
論拠を説得的に提示するには?
- 客観的なデータを論拠にする
〈例〉「もはや公衆電話を使う人はいないだろうから、公衆電話を設置する必要はない。」
⇒読み手には、それが客観的に正しいのか、分からない
- 論拠の中に自分の主観的な判断が混じっていないか、チェックする
〈例〉「18歳では適切な判断を下すには若すぎるから、成人年齢を引き下げるべきではない。」
⇒「若すぎる」というのは、異論がありうるような、主観的判断。この判断自体にも、それを支える論拠が必要
- どこからどこまでが自分の考えで、どこがデータなのか、自分でも意識し、読み手にも明確に分かるようにする
⇒論拠が十分であるか、自分でチェックができるか&読み手が、自分でその説得力を判断できるか
⇒自分でも、事実か主張かという区別を意識する&読み手にも分かるように、事実と主張を区別して書く
- ひとつのパラグラフにはひとつのことを
ひとつのパラグラフで述べるのは、ひとつの話題だけ!
なぜ??→自分がそのパラグラフで何をするのか確認できる&読み手が理解しやすくなる
- いろいろな情報を、ひとつのパラグラフに詰め込まない
⇒このパラグラフはひとつめの論拠を書くパラグラフ、次のパラグラフはその論拠の具体例を書くパラグラフ、というように、パラグラフの役割をひとつに決める
- パラグラフの冒頭か終わりに、そのパラグラフの話題を明記
⇒その話題と関係することだけを、パラグラフ内に書く
〈例〉しかしベルリンへの戦略爆撃の影響力は、そこまで大きくなかった。国民はナチスの思想に染まりすぎていた点が挙げられる。第一次大戦の末期に生活水準が低下したことで国内の戦意が喪失したという反省から、生活水準を下げないことを、ナチスは徹底しておこなった。それがあまりにも効率的に機能していたということもある。
わかりやすい文章にしてみよう!
〈修正例〉しかしベルリンへの戦略爆撃の影響力は、そこまで大きくなかった。では戦略爆撃が戦意喪失につながらなかったのはなぜか。まず、国民はナチスの思想に染まりすぎていた点が挙げられる。…また、第一次大戦の末期に生活水準が低下したことで国内の戦意が喪失したという反省から、生活水準を下げないことを、ナチスは徹底しておこなった。そしてそれがあまりにも効率的に機能していたということもある。
- パラグラフの役割・関係を意識する
全体の流れを意識して、パラグラフの順序を決める
せっかく調べたこと、思いついたことは、書きたい!
…でも全体の流れに沿わないことを書いてしまうと、むしろ分かりにくくなってしまう
⇒何が必要な内容か、どの順序が効果的かを考える
- 前のパラグラフとの関係を意識する
〈例〉パラグラフA(主張)→パラグラフB(Aの根拠1)→パラグラフC(Bの具体例)→パラグラフD(Bの留保)→…
- パラグラフ同士の関係が分かるように、接続詞や、前のパラグラフに関係する問いでパラグラフを始める
〈例〉 A:具体例の留保(日本・勤務時間外への影響の例外) B:具体例(日本・チームプレイ型による勤務時間外への影響) C:話題(市民の対等性の歪みについて日米を比較) D:まとめ(日本における対等性の歪み) E:具体例(欧米・勤務時間の内外での関係) F:具体例の補助(日本・勤務時間外への影響の例)
どの順番にすべき? C → E → B → F → A → D
- 推敲の習慣を
分かりやすい文を書くには、客観的な視点が必要!
⇒人に見せる前に、一晩寝かせてから読み直してみる
…初めて読む人の視点に立つ
通して読むことで、全体の流れを自覚する
チェックすることは?
- 誤字・脱字はないか
- 正確な文になっているか
- 分かりにくいところ、多義的なところはないか
- 全体の流れにとって不必要なことを書いていないか
- 十分な論拠を挙げているか