2023年12月にスタートしたムーンショット目標8にプロジェクト採択頂いたコア研究課題「海上豪雨生成で実現する集中豪雨被害から解放される未来」にて、2024年12月5日、プロジェクトの第三回全体合宿を行いました。この合宿は、12月6日のプログラム全体の会議の直前に合わせて設置したものになります。今回は総勢70名を超える参加者があり、小槻がプロジェクトマネージャー (PM) を務め、気象、防災、数理、情報、画像工学、法学、倫理などの分野から25名を超える研究代表者 (PI) が参画しています。相変わらず、会を主催する側になると、「参加してくれる皆さんが楽しんでくれるのか?」というのが心配になりますが、プロジェクトマネジメント班の準備・サポートもあり、有意義な会になったと思います。大橋さん・中村さん・曽我さん・宮本さん・嶋村さん・研究室メンバーの皆様、サポート有難うございました。

さて、合宿では、最初に小槻の自己満足の時間をもらっています。今回はカルヴァンの予定説の話をしました。マックスウェーバーの説くところ、この予定説は資本主義の成立に深く関わっています。曰く、「予定説の説くところ、我々の運命は予め定められている。我々は救われる筈だから (因) à 我々は正しい事をするはずだ (果)」。この確信により、本来禁欲的であったプロテスタントにおいて、お金を稼ぐということが正当化され、資本主義に繋がります (小槻の理解)。ここで、因果関係が逆転しているのがポイントです。本来、「正しいことをしたから、神に救われる」が正しい順番です。しかし、因果関係が逆転する中で、「予言の自己成就」という現象が起こります。これは何も不思議なことでもなくて、我々の普段の社会でも良く起こります。例えば、本来「受験勉強を頑張ったから大学に合格」しますが、「合格するはずだから (予言) 努力して勉強する。結果的に合格する (成就)」といったことは起こります。これは、逆もまた然りで、「合格するはずないから(予言) 努力して勉強できない。結果的に合格できない (成就)」といった悲観的予言の自己成就も起こりえます。

気象制御は挑戦的な研究ですが、「我々は目標実現できるはずだ」とまず仮定してみることは、結果それが予言の自己成就に繋がるはずです。これはアブダクション推論とも捉えられます。合宿では、「我々は目標実現できると仮定しよう。そう仮定してこれからの研究活動を進めよう」と呼びかけました。物事に対する姿勢を前傾させるだけで、達成できることはかなり増えると思っています。プロジェクトの参加者も増え、多くの参加者の意識を同じ方向に向けるためには、倫理・哲学の話も不可欠だと思っています。まだまだ困難が続きますが、引き続き、頑張ります。(小槻)

2024年12月5日のプロジェクト全体合宿・集合写真 (千葉大学・アカデミックリンク)