とても何かが分かったわけではないが、これまでの経験から大事だと思ったこと。
メンバーシップ①: 何をやるかより、誰とやるか
特に分野横断研究になると、学者としての見識が問われる。自分自身の深い専門性を持つと共に、その見識を他の分野との間に位置づけて語れる力が必要。分野融合は異なる分野を持つ研究者が集まる場所に起こるのではなく、一人の研究者の中に起こる。
学者として優れた研究者は、必ずしも論文が多い研究者でもないし、年を重ねた研究者でもない。議論が好きで、他の分野の研究者ともフラットに話せる、学者として優れた人が集まれば、本質的な議論ができる。
面白い人が集まれば、面白いことは起こる。
メンバーシップ②: 0-->1 と 1-->100の両方が必要
挑戦的な研究プロジェクトになると、「何を解くべきか、という問題定義 (0->1)」と、「問題をどう解くか、という実現 (1-->100)」の両方が必要になる。そして、その両方が得意な人は、限られる。両方の人が揃うと良い。
研究①: サイエンスとしての価値を見出す・win-winな状況を創る
だんだんと日本も貧しくなってきて、「社会実装・社会問題の解決」を目指す、もともとの建付けがサイエンスではないプロジェクトも増えてきている。だけど、目的drivenの研究であっても、その中にサイエンス・研究としての面白さ・価値を見出す努力を怠ってはいけないと思う。どんな研究であれ、(ほとんどの場合)必ずサイエンスとしての面白さは見いだせる。
そもそも、35歳を超えてくると、研究者は「どの問題に自分の時間と思考を使うべきか」を考えるようになる。論文に出来そうな研究テーマはいくらでも見つかる。「その中から何を選ぶか」を、選択しないといけないのである。制約条件は時間。
なので、「あなたの研究・技術の持ち出しで、この問題を解いてください」という形では、win-winな状況を創れない。一緒に議論して、考えるに足る問題に落とし込んでいく必要がある、と思っている。
研究②: 楽観的に目標を決め、悲観的に計画し、楽観的に実行する
これ。特に、悲観的な計画は重要。
これは、事前に計画を練っておき、様々なバックアッププランを持っておくということである。特にPIが悲観的に計画を持っておくことで、若者は楽観的に実行することが出来る。
マネジメント①: 情報を流通させる。自分の手で問題を解決しない。
プロジェクトの規模にもよるが、ある程度大きなグループになると、全体を有機的に機能させないといけない。
マネジメントの観点で最も重要な仕事は、情報を流通させることである。自分自身で問題を定義し、その問題を解決してもらおう、という発想だと、自分のみで描ける世界しか実演できない。
また自分自身で問題を解決しないことも重要である。何故なら、それを始めると一瞬でスタックしてしまうから。
マネジメント②: 参画者/マネジメント班の負担を仕組みで減らす。
仕組みづくり、これに尽きる。例えば、報告書や評価プレゼンのためのフォーマットが、JSTなどの予算元から来るが、多くの場合分かりにくいし、使いにくい。
そういったフォーマットを、「ここを書いてください」「このスライドを作ってください」「この書式で作ってください」と展開する。そうすると、やるべきことがspecifiedされた参画者は楽になるし、それを取りまとめるマネジメント班の負担も減る。
そもそも、年を重ねると書類の数が増え、「そもそもこの書類はどうなってるのか?」と読み取るまでに凄くストレスがかかる。この負担を減らせれば、「この情報も書いてください」という手戻りを減らすことが出来る。このちょっとしたストレスも、重ねれば巨大化する。
それを解決するのは、「仕組化」である。