
2026.3.17
News
FAQの目的 と 留意点
2025年ごろから、取材や進学相談などで研究に関する問い合わせをいただくことが増えてきました。そのため、よく質問いただく内容をFAQにまとめ、よりポイント絞った議論・相談になるようにと考えています。
なお、技術は日進月歩で進むため、回答したタイミングは (YYYY.MM) の形式で付記しています。回答が古い情報については、最新の状況とずれている可能性があることをご留意ください。
基礎情報
Q. AI天気予報とは何ですか? (2026.03)
- AI天気予報は、従来の物理モデルに加えて、人工知能が大量の気象データからそのパターンを学習することで予測を行う新しい技術です。 2022年以降、GoogleやNVIDIAなどがAI気象モデルを発表し、研究が急速に進展しています。
Q. AI天気予報モデルの主なメリットは何ですか? (2026.03)
- 主なメリットは次の3つあります。
- (1) 計算速度の向上: AIモデルは従来の数値モデルより高速に計算できます。そのため、より長期の予報を、短時間で実施可能になります。
- (2) アンサンブル予報の拡張: 天気はカオス的な性質を持つため、複数の予報を行う「アンサンブル予報」が重要です。 AIにより多数の予報を実行できるため、災害リスクの確率予測がより精密になります。
- (3) 高精度な予報: 従来の数値気象予測モデルは、モデル構築の際に置かれたいくつかの過程により、特定のバイアス・傾向を持つことがありました。このバイアスは、各数値モデルによって異なりますが、例えば、「対流圏上層の雲が過大に評価される」とか、そういったものです。AIモデルは、これらの問題を緩和することで、高精度な予報を実現できることが多いとされています。
Q. 日本の天気予報はAIで遅れているのでしょうか? (2026.03)
- 2022-2024年ごろの研究は欧米のIT企業が先行していますが、技術的に追いつくことは十分可能だと考えています。その理由は、AIモデルの多くは公開されており、追試が可能な状況だからです。
- 日本は、ひまわり衛星、高密度観測、レーダー観測など観測インフラが充実しているため、地域特化型の高精度予測では強みを出していけるのではないかと考えています。
今後の予測
Q. AIは従来の天気予報を置き換えるのでしょうか? (2026.03)
- 完全に置き換えるわけではなく、しばらくは共存が進むと予測されます。
- 現在の天気予報は
- 観測データから現在の状態を推定する(データ同化)
- 未来を計算する(予報モデル)
- 統計補正
- という3つの要素で構成されています。
- AIは主に②の予報モデルの部分で大きく発展していますが、観測データの取り込み・データ同化などは依然として重要です。 今後は AIと物理モデルの融合が主流な開発要素になると考えられています。
Q. AI天気予報の次の研究課題は何ですか? (2026.03)
- 小槻の私見ですが、焦点は データ同化のAI化です。データ同化とは、衛星・レーダー・地上観測などのデータを統合して「現在の大気の状態」を推定する技術です。現在の天気予報では観測データの一部しか利用できていませんが、AIを使うことで、衛星画像、カメラ画像、市民観測などの新しいデータを取り込める可能性があると考えています。
研究室で行っているAI天気予報研究について
Q. 研究室で行っているAI天気予報研究について教えてください (2026.03)
- 研究室では、AIとデータ同化技術を組み合わせることで、次世代の天気予報システムの開発に取り組んでいます。天気予報の精度を高めるためには、衛星・レーダー・地上観測などの観測データを統合して現在の大気状態を推定する「データ同化」という技術が非常に重要です。私たちの研究室では、AIによる予報モデルとデータ同化を統合する研究を進めており、これまで十分に活用できていなかった観測データを天気予報に取り込むことを目指しています。
- AIを活用することで、従来の天気予報の枠を超え、風景の予測や市民参加型の観測データの活用など、新しい形の天気情報の提供にも挑戦しています。こうした研究を通して、天気予報を単なる情報提供から、社会の意思決定を支える情報基盤へと発展させることを目指しています。
Q. 風景予測研究について教えて下さい (2026.03)
- 気象情報からAIにより風景を予測する研究に取り組んでおり、現在特許を出願中です。
- 今後、天気予報は単に「雨が降るかどうか」だけではなく、景色の予測、観光情報、生活行動の支援など、AIによる実用的な情報へと進化する可能性があります。
Q. 今後、AIでどのような天気予報を実現していきたいですか? (2026.03)
- 私たちは、AIを活用することで、天気予報を「単に未来の天気を伝える情報」から、「人々の行動や社会の意思決定を支える情報基盤」へと発展させたいと考えています。
- 従来の天気予報は、雨が降るかどうかや気温といった基本的な気象情報を提供してきましたが、これらの予測のより精緻化を図ります。
- さらに将来的には、気象データから風景の様子を予測したり、市民が提供する観測データを取り込んだりすることで、社会と一緒に作る新しい天気予報のパラダイムを作っていきたいと考えています。AIを活用することで、天気予報をより実用的で、社会に役立つ情報へと進化させていきたいと考えています。
気象制御研究との関連
Q. 気象制御研究とは何ですか? (2026.03)
- 気象改変は、雲の性質を変えることで降雨などに影響を与える技術です。研究室では、ムーンショット事業の一環として 海上で雨を発生させることで陸上の豪雨被害を減らせないかという研究を行っています。
- 気象制御は世界的にも研究段階の技術であり、安全性や影響評価を含めて慎重に研究を進めています。現在は基礎研究段階であり、実現可能性の検証を進めています。また2026年1月からは、小規模な屋外実験も開始しました。
Q. 気象制御の実現にはAIが必要なのですか? (2026.03)
- 気象改変を航空機やドローンなどで実施していくためには、雲スケールの高精度予測が必要です。 AIはこうした細かい気象現象の予測能力を向上させる可能性があり、重要な研究分野となっています。また、これらの実施はリアルタイムで計算を行う必要があり、その観点でも高速計算可能なAI天気予報モデルの開発は重要な研究です。
