全球降水マップ

研究の意義

  • 近年、気候変動の影響とみられる台風や線状降水帯など、激しい水災害が世界中で問題となっています。我が国でも毎年のように豪雨・洪水・氾濫が発生しており、豪雨や洪水等の気象・水文モニタリング精度を向上することは喫緊の課題です。こうした世界中の水災害問題の解決に向けて、地球上を隈なく観測する衛星からの全球降水量推定は、地球科学の発展と共に、社会的にも重要な意味を持ちます。
  • 研究室では、全球降水観測 (Global Precipitation Measurement; GPM) やその他の衛星観測データを陸面データ同化や機械学習を始めとするデータサイエンス技術により統合することで、JAXAの全球降水マップGSMaPの高度化に取り組んでいます。GSMaPアルゴリズムは、熱帯降雨観測計画 (Tropical Rainfall Measuring Mission; TRMM) 衛星に搭載された降雨レーダ (Precipitation Radar; PR) GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ (Dual-frequency Precipitation Radar; DPR)を教師としたマイクロ波放射計やマイクロ波サウンダーからの降水量推定 GSMaP MicroWave Radiometers (以下、GSMaP_MWR) を基盤としています。そこに、Ushio et al. (2009) による雨域の移動ベクトルを用いて非観測域の時空間補外を適用したプロダクト(GSMaP Moving Vector with Kalman Filter; GSMaP_MVK)とその準リアルタイム版 (GSMaP Near Real Time; GSMaP_NRT)や、NOAA Climate Prediction Center (CPC) から提供される地上観測降水量を用いた日雨量補正 (Mega et al. 2018; GSMaP_Gauge) 等の発展プロダクトが存在します。
  • 我々は、陸面モデル・データ同化・機械学習といった理学・統計数学・情報科学に跨る研究推進により、GSMaPアルゴリズムの高度化に取り組んでいます。

Reference

  • Muto, Y., Kanemaru, K., and Kotsuki, S. (2023): Correcting GSMaP through histogram matching against satellite-borne radar-based precipitation, SOLA, 19, 217-224. doi: 10.2151/sola.2023-028