量子計算

研究の意義

  • データ同化は、観測データと数値モデルを統合して、力学システムの解釈と予測を改善する数学的学問です。地球科学、特に数値気象予測 (NWP: Numerical Weather Prediction) において重要な要素となっています。現在、世界の多くの気象予測センターは、変分法、若しくは、アンサンブル変分データ同化手法を採用しており、勾配ベースの最適化によって繰り返しデータ同化のコスト関数を削減します。 ただし、これらの方法には、繰り返し計算に伴う大量の計算リソースが必要となります。
  • 最近、量子コンピューティングが計算技術の新しい手段として台頭し、古典的なコンピューターの計算上の課題の克服が期待されています。 量子コンピューターは、トンネル効果や、重ね合わせ、もつれなどの量子効果を利用して、計算需要を大幅に削減できます。 特に量子アニーリングマシンは、カナダのD-Waveにより実現されており、最適化問題を解決するの強力なマシンとなっています。
  • 研究室では、この量子アニーリングマシンを用いたデータ同化研究を推進しています。量子計算機に特有のノイズ耐性や、必要な量子ビット数を抑える数理的研究を行うことで、数値気象予測モデルへの量子データ同化の実現を目指します。
  • また、データ同化だけでなく、ボルツマンマシンなど、量子計算を用いた新しい災害予測・緩和研究を開拓していきます。

Reference

  • Kotsuki, S., Kawasaki, F. and Ohashi, M. (2024): Quantum Data Assimilation: A New Approach to Solve Data Assimilation on Quantum Annealers. Nonlin. Processes Geophys. Lett.