評価指標をチェックする
研究業界では、評価指標が事前に示されることが多いです。例えば科研費だと、「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」があり、規定を確認すると指標が明示されています。
(科研費・若手の評価指標の例。応募項目によって異なる)
指標を見てからもう一度記述内容を見直すと、例えば、「(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」」で書くべきポイントが見えてきます。
・学術的に見て、推進すべき重要な研究課題であるか。
・研究課題の核心をなす学術的「問い」は明確であり、学術的独自性や創造性が認められるか。
・研究計画の着想に至る経緯や、関連する国内外の研究動向と研究の位置づけは明確であるか。
・本研究課題の遂行によって、より広い学術、科学技術あるいは社会などへの波及効果が期待できるか。これは科研費に限らず、博士試験の入試であったり、大学教員の公募であったり、色んな所に見られます。
注意して募集要項を見ると、相手がどんな採点表をもっているのか、見えてくることが多いです。
どんなに内容が良くても、採点表の一部しか点数が取れなければ、当然良い点数にはなりません。採点表が公表されているのは、フェアにしたいのと、情報格差をなくすためだと思っています。
評価者の気持ちを考える
[結論]
・研究業績を挙げる
・概要と作図を丁寧に仕上げる
・熱意を文章から滲ませる
論文を査読した経験があればわかってきますが、基本的に、他の人の文章を読むのは、本当に辛いです。
科研費の審査でも、おそらく一人当たり数十~100くらいの提案書を見て、各カテゴリに1~5で採点していきます。
さて、そのすべてを隅々まで読むでしょうか? 読まないです。おそらくすることは、
・まずざっと、ボーダーライン以下か、以上か見極める。(多分ここで、60%くらいは落ちる)
・そのあと、精読して、点数をつける
なので、まずはファースト・スクリーニングを通過しないと話になりません。
どうやってスクリーニングするかといえば、こんな感じだと思います。
・業績リストを調べる: 若手であれば、年1本以上論文が出ているか。中堅であれば、これが3~5くらいになると思われる)
・概要と図から内容が分かるか: ここで分からせなければ、あかんでしょう。そのあとは読んでもらえません。
・熱意があるか: 作図が丁寧か、文章は隅々まで埋められているか。熱意のない文章なんて、読みたくないでしょう。
ファースト・スクリーニング以上は、査読者との相性もあると思いますし、時代の流行もあると思います。
とはいえ、採択率が20~30%だとすると、ほとんど提案書は、最初のスクリーニングで落ちていることになります。
「縦の論理」 と 「横の論理」
小槻も提案書を見る機会がちょくちょく増えてきたんですが、気になるのは、独善的な言い回しです。
・この問題は大事である (キリっ)
・この問題に、私はこうやって研究する
・研究では、こんなことが得られるし、こんな発展も得られる
これはコンサル的に言えば縦の論理といわれるもので、AならばB、BならばC、と論理が繋げていくものです。この論理思考はおそらく、比較的だれでも得意です。一方で、「この問題は大事である」が、無条件に断言されればされるほど、「むっ」とします。独善的な印象を持つからです。
(私も今トレーニング中ですが)気を付けるべきは、「横の論理」です。多くの選択肢 (他の提案)の中から、「なぜ私の提案/問題を選ぶべきか」という視点の記述があると、「なるほど、確かにこの研究は必要だ」と思ってもらいやすくなります。また見てる感じだと、若手でこういった書き方が出来てる人は少ないので、差別化できると思います。
・気象制御にむけて、大きくこんな障壁がある(列挙)
・そのうち、この問題が本質的なボトルネックとなる。なぜなら、~。
・だから、私たちはこの問題に取り組むために、この提案をする。
・以下、縦の論理
偉そうに言ってますが、35歳にして学んだことです。縦の論理による提案を、「お化け屋敷」と呼んでいます。
・今の提案書は、学園祭でお化け屋敷がやりたいと言って、お化け屋敷ってこんなに良いんだよ、という説明をしてるに過ぎない。
・大事なのは、他にもいっぱい候補がある中で、「なぜうちのクラスではお化け屋敷をやるべきか?」を示すことだ。
自分が前に進むために、縦の論理は重要です。ただ、人を説得するときには、横の論理を意識すると良いと思います。
そして、提案書とは、説得に近いものだと思います。
この辺を学ぶのに、下記が名著とされています。小槻はまだ未読です。
バーバラ・ミント「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」