一つの研究は論文を出版することで完結する。

その際、論文は日本語でも英語でもない、Scientific Writing (SW)で書くこと。

SWとは、科学研究の成果を報告するための文章表現であり、書き方のテクニックと言うよりは、言語だと考えた方がよい。SWに沿って文章を構築することにより、他の研究者たちに通じる文章となるだけでなく、論文も受理されやすくなる。

 

花崎直太氏おススメのSWに関する教科書を、まず一冊読もう。

  • Lewis, N. Whitby, and E. Whitby: 科学論文の科学者・技術者のための英語論文の書き方国際的に通用する論文を書く秘訣、東京化学同人、pp2192004
  • 河野哲也:レポート・論文の書き方入門、慶應義塾大学出版会、pp1162012

 

★論文を書き始める前にすべきこと&知っておくべきこと!

  • すべての関連文献を検索/収集する
  • 投稿するジャーナルや読者層を知り、その分野の関心ごとを知る
  • 最初の下書きが完璧である必要はない

★どこから書き始めるの?

  • すべての図と表のリストを作成して、アウトライン(別blog記事有)を作成する
  • それらの図と表をプレゼンテーション順に整理する(結果とディスカッション)
  • 最初に序論を書かない…
  • 実験方法など、メソッドから書き始める
  • 次に、結果と考察を書く
  • モデル研究の場合、結果は往々にして抽象的で、考察も併記したほうが分かりやすい
  • ただし結果と解釈の段落は必ず分けること
  • 文章量(図表を含まない)の目安はIntroduction:Methods:Results+Discussion=1:2:4

★論文を書く上でのヒント

  • 各段落の最初の文章は、その段落の要旨を表したものにする
  • 故に、各段落の最初の文章を読んだだけで、研究の概要や論理の構成がほぼ追えるようにする

 

★Abstractのヒント

    • Abstractは「要約」だが、その名の通り、特定の情報を本文から「抽出」するようにすると、うまくまとまりやすい
    • 指定された文字数に従って、論文から以下についての主要な情報を抽出しよう
      • IntroductionのObjectiveの部分
        • 【重要】IntroductionのBackground, Earlier works, Shortcomings of earlier worksはAbstractでは触れないが、それぞれに1文ずつ
      • Methodの最重要ポイント
      • Results and Discussionの最重要のポイント(結果の数値を含める)
      • ConclusionsのAnswersの部分
    • モデル研究の場合、具体的には次のようにすると比較的簡単にまとまる
      • ○○が○○に及ぼす影響を明らかにするため、○○に関するシミレーションを実施した[目的:1文]
      • 本研究では、○○という条件で行った[モデルの説明:1文]
      • シミュレーションは○○という条件で行った[シミュレーションの説明:1文]
      • ○○については、○○の条件では○○であることが分かった→これに対し、○○の条件では○○であることが分かった→他に、○○については、○○であることが分かった[結果の説明:3~4文]
      • これらの結果から、○○が○○に及ぼす影響は○○であることが分かった
    • 吹き出していいのは情報だけ~文章をコピペするのは絶対にダメ~流れるようにAbstractが読めるように何度も推敲する

 

★Introductionのヒント

    • 背景、先行研究、先行研究の課題、目的の4段落で構成する
    • 背景 (Background):読者の関心を以下の手順で研究対象に誘導すること
      • 非常に大くくりな研究テーマの重要性
        • 地球温暖化は世界の発展に対する脅威である。
      • 大くくりの研究テーマの重要性(この論文で扱う問題だけを取り上げる)
        • 地球温暖化は地球全体の降水を変化させる。
      • 論文が扱う具体的な研究テーマの重要性
        • これにより、人類の最も基本的な水資源である、河川流量も世界全体で変化していくと考えられている。
    • 先行研究 (Earlier works):先行研究が明らかにした、研究テーマの知見をまとめること
      • 重要な関連研究を古いものから新しいものへと順に説明すると、まとまる
    • 先行研究の課題 (Shortcoming of earlier works):ここでの目的は、先行研究の問題で、今から自分たちが扱おうとする問題のポイントをまとめること
      • 先人たちの業績に敬意を払いつつ、先行研究の問題を論理的に指摘する
      • 論文の査読をするのが、先行研究の著者というケースも多いので、失礼な表現を避ける
    • 目的 (Objective)
      • 研究の対象と目的:先行研究の問題のうち、何の解決を目指すのかを示す
      • 研究の方法:なぜ先行研究で解決できなかった問題を私が解決できるのか示す
        • ここはintroductionの中で、かなり重要な部分なので、研究のオリジナリティを端的に示す
      • 答えるべき問い (Research question):研究を通じて答えるべき問いを定義する
        • これがIntroductionで最も重要な部分~論文とは自分で設定した質問に、自分で考えた答えを示した文章~質問を設定しないと論文にならない!!
      • 論文の構成:次章以降の論文の構成を示すが、IMRAD構成なら不要な場合も多い

 

★Methodのヒント

    • Methodの偉大なお手本は料理のレシピ
    • 自分たちがどのようにフロンティアを前進させたか、それを読者が再現するにはどうすれば良いかを示す部分~レシピに従えば、誰でも同じ料理が作れる
    • モデル(コンピュータシミュレーション)を開発・改良しつつ、シミュレーションを実施した研究の場合、以下の4つの節で構成すると説明しやすい
      • モデルの節:モデルの概要
      • データの節:モデルへの入力データや場合によっては検証データも
      • シミュレーションの方法の節:シミュレーションの条件や設定&実施したシミュレーションの一覧表など
      • 解析の方法の節:シミュレーション結果に統計処理などを施す場合は、それについても書く

 

★ResultsとDiscussionのヒント

    • ResultsとDiscussionはきちんと区別する
    • 自分たちが見つけた研究のフロンティアを客観的に描写し (Results)、解釈を述べる (Discussion)
    • モデル研究の場合は、結果が往々にして抽象的なため (モデルの仮定やシミュレーションの設定に全て依存するため)、解釈も併記したほうが分かりやすい
    • しかし結果と解釈をごちゃ混ぜにしてしまうと、どこまでがMethodsに沿って得られる結果で、どこからが著者らの解釈なのか分からなくなってしまうので、段落は結果と解釈で必ず分ける
    • Resultsはシミュレーションの方法と解析の方法に沿って得られた結果を客観的に淡々と述べる
      • 例:「変数Xは、シミュレーションAで一番大きく、Cで一番小さい。」
      • しいて言うと、Resultsはレシピの例で言うと、完成した料理の写真
    • Discussionは結果の解釈を述べる~もう一歩踏み込むと、示した結果が信頼に足ることを読者に確信させるために書く
    • 示す結果により、何を書くべきかは大きく変わるが、おそらく最低限含めるべきは、「なぜそのような結果になったか (=メカニズム)」と「結果の妥当性や整合性」
    • メカニズムはモデルや条件・設定が結果にどうつながっているのかを書く
    • モデル研究の場合、結果にモデルの弱点や欠点が表われることが多いが、その場合はなぜそのような弱点が表われるのか簡潔に説明する
    • 妥当性や整合性は結果やメカニズムが理論や事実と合うかについて書く
    • もしモデルの一部に短所があったとしても、研究の結論に影響がないこと、それを上回る長所があることを示す
    • Discussionはレシピの例でいうと、(ちょっと苦しいが) 料理の写真の横に添えてある「○○と○○の相性が抜群」などの文章~なぜ美味しいのかのメカニズムやおいしさの解釈を示している

 

★Conclusionsのヒント

    • 「まとめ」でも「むすび」でもなく、「結論」
    • 自分たちの研究がいかに重要で、何につながりそうかも書く
    • ConclusionsはAnswers, Significance, Implicationsの3段落構成を基本にする
      • AnswersではIntroductionで挙げた「答えるべき問い」 (Research questions)」に対する回答を述べる
        • 【注意】ここで書くべきはあくまで問いに対する回答で、論文の要約ではない~Introductionで「答えるべき問い」をしっかり定義しておかないと、この段落はうまく書けない
      • SignificanceではAnswersが研究フロンティアの開拓にどのように貢献したのかを書く
        • 【注意】Introductionで先行研究のレビューをしっかりしておかないと、この段落はうまく書けない…論文や研究の貢献ではなく、あくまでAnswersに絞って貢献を書くこと
        • 論文や研究の貢献を書くとIntroductionの繰り返しになってしまう
      • Implicationでは期待や希望的観測について述べる(特になければ書かなくてよい)
        • 例えば、「この研究は○○問題の解決につながるだろう」とか「今後の研究の課題は…」とか、実施も実現もしていないが、どうしても主張したい事項がある場合に、この段落に書く
        • 【注意】あくまで、利用した手法や得られた結果から直接示唆されることについて書くこと~例えば、シミュレーションを使って、将来温暖化によって、渇水の再帰年数が半分になったという結果が得られたら、シミュレーションという手法や半分という結果から得られる示唆を書くこと→「だから、温暖化を防ぐことが大切だ」と書いてしまう人も多いが、方法や結果との関連が小さく、説得力のある議論は展開できない

 

★Referenceのヒント

    • Referencesは著者の研究への姿勢を表す鏡
    • 引用した文献をリストにして提示する部分
    • 全ての研究は先行研究の上に成り立っているので、おろそかにしない
    • 誤値や指定された書式からの逸脱があってはならない
    • 完璧なReferencesを作るため、EndNoteなどの文献データ管理ソフトウェアを利用する
    • 文献は論文のウェブサイトから書誌情報をダウンロードする
    • 著者名やタイトルなどの誤字脱字を避けるため、絶対に手入力してはいけない
    • 書式もできるかぎりEndnote Stylesなどをダウンロードする
    • 査読者はReferencesをよく読んでいるので、文献の欠落、間違い、フォーマットの乱れがあると、十分推敲されていない、不完全な論文の手直しをさせられている気になる
    • 査読者が査読する姿を思い浮かべ、Referencesの作製にも十分な時間をかける

 

★原稿は地道に読んで、訳して推敲する

    • 声をだして読んでみる~自分の書いた文章を少し客観的に捉えることができる
    • 声に出すと、単純な文法のミス、書きづらいと感じた箇所に別の表現を見つけたりできる
    • 英語で書いている際のヒント:TitleやAbstractなどの重要な箇所や、特に悩んでいる箇所は、一度一字一句を正確に母国語に直訳する
    • 母国語に直訳して意味や論理が通らない場合、まず母国語の訳文を直し、それを再度直訳して英語の文章を直す
    • しかし最初から論文を全て母国語で書いて、最後に英語に訳す、というやり方はお勧めしない
    • 特に日本語は論理の組み立て方が、英語と全く違うので、大がかりな推敲が必要で効率が悪い
    • 標準的な日本語と英語では文の並べ方が異なる

 

★原稿は最も多くの文献を利用した論文誌に投稿する

    • まず、候補を複数挙げる
    • 基本的には、関連する先行研究が最も多く出版されている論文誌を候補にする
    • 比較的新しい研究テーマで一つの論文誌に絞り込めない場合は、「古典」(研究テーマの出発点になった最も重要な論文)が出版された論文誌を候補にするとよい
    • 次に、論文誌の基本情報を調べる→英語で執筆の場合、Science Citation Index (SCI), Science Citation Index Expanded (SCIE) 登録されている雑誌かどうか(いわゆるインパクトファクターIFがあるかないか)を調べる
    • IFのある論文誌は購読している機関も多く、検索もしやすいので、論文を読んでもらえる機会が増えるが、査読も厳しくなる傾向がある
    • 次に、出来る限り、論文誌の主な読者層を調べる
    • 最後は、共著者によく相談したうえで、掲載された時、自分が一番うれしくなる雑誌を選ぶ

 

★査読への回答書は査読者ではなく、編集長宛てに書く

    • 回答書の読み手:回答書を真っ先に読むのは、論文の編集担当者(EditorAssociate Editor
    • 回答書を見て、もう一度査読に回すか、そのまま登載判定するか判断することにな
    • 回答書の読まれ方:編集担当者は多忙~回答書は、編集担当者が改訂稿を読まずに回答書だけ一読しても、やりとりが分かるように書くこと
    • 上級テク:査読者のコメントにただ回答・返答するだけではなく、筆者の研究に対する明確な意志と意図を含められると、回答書は力強く、面白くな
    • 肯定的なコメントに対しては、さらに長所を畳みかける回答にする
    • 批判的なコメントに対しては、反論に加え、欠点を上回る利点があることを強調した回答にする

 

★共著者は研究の運命共同体~お世話になった人は謝辞に含める

    • 論文は基本的に未来永劫、取り消すことのできない文章
    • 論文を撤回することもできるが、撤回したことを含め、記録に残る
    • 「研究でお世話になったので共著に」という習慣が日本の一部の分野で見られるが、お世話になったなら、謝辞で述べるべき
    • 筆頭著者は論文投稿の1か月前には原稿を共著者に送る~コメントをやり取りする時間
    • コメントに対応して改訂するための時間を最低2週間はとる
    • 共著者は原稿を徹底的に改訂・推敲すること~これをしないと査読者、読者にこのプロセスを押し付けることになり、恥ずべきこととなる
    • 「修正なしで掲載」あるいは「軽微な修正のうえで掲載」されると著者全員が思える原稿しか投稿しないこと
    • 一流の研究グループはいつも必ず、ほぼ完ぺきな原稿を投稿する

 

★図の作りこみ方

    • 図は作りこむべき!もし論文原稿の図に息を飲むようなクオリティのものが含まれる場合、論文が却下されることはない
    • NatureやScienceに掲載される論文の図は、最高レベルのショーケースなので、いつも目を通すこと~技術のトレンドをつかみ、インスピレーションを得られる
    • MS Excelをなるべく使わない~手抜きでぱっと作った、少し古臭い印象を与える?
    • ソフトウェアのデフォルトの極彩色のカラーパレットを使わない方がよい
    • Microsoft Officeのデフォルトのカラーパレット(2020年現在)やGrADSのデフォルトのレインボーカラーのまま図を作らない方がよい
    • 色覚異常の方はレインボーカラーをうまく判別できないことがあるので、Color Brewerを使用するとよい~洗練された印象になる(2020年現在)